「笑顔あふれる学校を創り、見えない学力を育む」
石垣市立富野小中学校長
言うは易し、行うは難しである。ここ数年、先生方には「未来は変化の激しい社会だから『主体的で対話的な深い学びを』とか『正解より最適解を求める授を』」などと指導をしているが、昨今の変化についていけない自分がいて、後ろめたさを感じている。
私ごとだが、妻はアマゾンから本を買う。娘はメルカリで本を売る。私は今も書店に出向く。最近、やっとスマホを手にした。LINEニュースを開くと、なぜかひいき球団の情報と老化予防サプリのCMが真っ先に舞い込んでくる。ネット記事を読んで合点した。「あなたの『いいね』が150件わかれば、あなたの配偶者よりもあなたを理解し、300件になれば、あなた以上にあなたを理解する」そうだ。
そんな時代遅れの私だが、学校経営を担う立場にいる。直面する大問題はコロナだ。「正しく恐れよ」と言うが、何が正しく、何がフェイクなのか、主体的に調べれば調べるほど課題や疑問が出てくる。保護者と話し合い、すでに修学旅行と運動会を延期した。子どもたちのことを思えば、中止だけは何としても避けたい。
さて、本校に赴任して2カ月。校訓「美ら心(ちゅらぐくる)」を生かしながら、市教委施策「勇気づけの教育」をしっかり具現化したいと意気込んでいる。
富野っ子の「美ら心」は「優しさや思いやりにあふれ、好奇心旺盛で何事にも意欲的に誠実に取り組むところ」(職員アンケート)だ。一方、今年育てたい「美ら心」を、「リーダーシップ、コミュニケーション力、自己肯定感、メタ認知力、計画立案力」の5つに絞り、その方策を考え、実践しようとしている。
「リーダーシップ」という「見えない学力(非認知能力)」をいかに育てればいいか。調べてみると、「とにかくワクワクせよ。自分の夢や目標に、自分の仕事に、困難にさえもワクワクせよ。周りの人の可能性にワクワクし、喜んで周りの人のために行動せよ。」ということであった。そういう理由から経営目標を「みんな(子どもたち、先生方、保護者・地域の方々)の笑顔があふれる学校」とし、校長として率先垂範を心がけている。
5月、先生方にどのようにして「見えない学力」を伸ばすかを問うた。A先生は「休み時間等を利用し、遊びを通して教師も一緒に遊び、コミュニケーション力を向上させるように努める。」また「児童が楽しいと思える授業になるよう体験的な学習や体を動かした学習に努める。」と答えた。またB先生は「児童が自ら取り組みたい学習課題を設定し、児童のできたこと、わかったことを賞賛し、次への学習意欲へつなげるように支援する。」と答えた。さらにC先生は「生徒が自主的に行動できるよう、生徒自身に考える時間、場を設定する。」また「行事等の企画、運営を数多くこなし、自信をつけさせ、自主的に行動できるようにサポートする。」と答えた。
6月、休校中の校内研修会、「県教委・学びの質を高める授業改善・学校改善」を全員で学んだ。子どもたちは「安心・所属・承認」の欲求が満たされてはじめて、人生の主体者として「自立」に向かうことを再認識した。
人には必ず一長一短がある。一人一人の良さに注目し、自他の幸せのために行動する共同体的組織でありたいと思う。日々ワクワクしながら、笑顔あふれる学校を創っていきたい。